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【相続について考える、いま私たちにできること】vol.5

【相続について考える、いま私たちにできること】 vol.5

生前贈与はもう遅い?
新ルール(暦年贈与と相続時精算課税)の活用法

家族と会社のための「相続・事業承継」コンプリートガイド、第5回のテーマは「生前贈与の新ルール」です。

「相続税対策といえば生前贈与」
そんな常識が、今、大きな転換期を迎えているのをご存じでしょうか。

「税制改正で生前贈与がやりにくくなったって本当?」
「今から始めても、もう遅いの?」

結論から申し上げます。決して遅くはありません。ただし、「これまでのやり方」のままでは損をしてしまう可能性が非常に高いです。

今回は、2024年からスタートした新しい贈与のルールを、FPの視点から日本一わかりやすく解説します!

1. そもそも、何が変わったの? 「2つの選択肢」をおさらい

生前贈与には、もともと「暦年贈与」と「相続時精算課税」という2つの制度がありました。今回の改正で、この両方に大改革が起きています。

まずは、新ルールの全体像を比較表で見てみましょう。

① 新・暦年贈与
(従来型)

非課税枠

年間110万円まで

申告の有無

110万円以下なら不要

最大の変更点

亡くなる前7年間の贈与は、相続財産に「持ち戻し」される

おすすめの人

比較的若く、長期的な計画で多くの人に財産を分けたい人

② 新・相続時精算課税
(神アプデ)

非課税枠

年間110万円(基礎控除)
+ 累計2,500万円(特別控除)

申告の有無

初回に届出書が必要
(110万円以下なら2回目以降は不要)

最大の変更点

基礎控除(年110万円)部分は、持ち戻し不要(完全に非課税)に!

おすすめの人

相続まで時間がない人、特定の少人数に確実に資産を移したい人

2. 激震!「暦年贈与」は持ち戻し期間が3年→7年に延長

これまで最もメジャーだった「年間110万円の非課税枠」を使ってコツコツ贈与する暦年贈与。今回の改正で、最大の武器だった「節税効果」にブレーキがかかりました。

恐ろしい「持ち戻しルール」とは?

暦年贈与では、贈与した人が亡くなった場合、「亡くなる直前に贈与された分は、贈与がなかったものとして相続税の対象に戻す」というルールがあります。これを「生前贈与加算(持ち戻し)」といいます。

この持ち戻し期間が、従来の「3年間」から「7年間」へと一気に延長されました。

⚠️ ここに注意!駆け込み節税が困難に

つまり、亡くなる前の7年間にコツコツ贈与していたお金は、結局「相続税」の計算に組み込まれてしまうため、駆け込みでの節税が非常に難しくなったのです。

※ただし、延長された4年間(亡くなる前4〜7年前)に贈与された分については、総額100万円まで相続財産に加算しなくてよいという緩和措置もあります。

▼ こんな人は「暦年贈与」がおすすめ

  • 贈与者(親・祖父母)がまだ若く、健康である
  • 子や孫の人数が多く、1人に年110万円ずつ分散して長く贈与できる

3. 大出世!使い勝手が劇的に向上した「相続時精算課税」

一方で、これまで「使いにくい」と不評だった「相続時精算課税制度」が、今回の改正で「神アプデ」とも言える大減税ルートへと生まれ変わりました。

この制度は、原則として「60歳以上の父母・祖父母」から「18歳以上の子・孫」への贈与が対象です。
最大2,500万円まで贈与税が非課税になりますが、代わりに「ここで贈与された分は、将来相続が発生した時に相続税としてまとめて精算してね」という仕組みです。

何が変わった? 新設された「年110万円の基礎控除」

新ルールでは、この制度を選んだ場合でも、新しく「年間110万円の基礎控除」が使えるようになりました。

しかも、この基礎控除の枠(年110万円)で贈与した分は、将来相続が発生した時にも相続財産に「持ち戻す必要がない(=完全にスルーされる)」のです!

これは暦年贈与の「7年持ち戻し」よりも圧倒的に有利な条件です。

▼ こんな人は「相続時精算課税」がおすすめ

  • 贈与者(親・祖父母)が高齢で、暦年贈与の「7年縛り」に間に合わないリスクがある
  • 贈与する相手が「長男の1人だけ」など、少人数に集中させたい
  • 将来値上がりしそうな資産(土地や特定の株式など)を早めに移転させたい

4. FPがアドバイス!わが家の最適解を見極める「3つのチェック」

「結局、うちはどっちを選べばいいの?」と迷ったら、次の3つの視点で考えてみましょう。

チェック 1

贈与する側の「年齢」と「健康状態」

親御さんや祖父母の方が70代、80代である場合、暦年贈与の「7年持ち戻し」の壁にぶつかる可能性が高くなります。その場合は、最初から「相続時精算課税」を選び、年間110万円の枠を安全に消化していくのが賢明です。

チェック 2

贈与したい「人数」

暦年贈与は、もらう人(子・孫・その配偶者など)の数が増えれば増えるほど、非課税枠を「110万円×人数分」に倍増させることができます。大家族であれば、やはり暦年贈与のパワーが勝ります。

チェック 3

一度選んだら「後戻りできない」

ここが最大の注意点です!

同じ贈与者・受贈者の間で、一度でも「相続時精算課税」を選択すると、二度と「暦年贈与」に戻すことはできません。
(例:父親からの贈与について精算課税を選んだら、父親からの贈与は一生精算課税になります。※母親からの贈与は別途暦年贈与を選ぶことが可能です)。

まとめ:「とりあえず110万円」の時代は終わった

2024年からの新ルールにより、「とりあえず毎年110万円を振り込んでおけば安心」という時代は終わりました。

  • 長期戦でいくなら「暦年贈与」
  • 短期決戦、または確実性を取るなら「相続時精算課税」

家族の年齢、資産の状況、そして「誰に、どんな想いで資産を繋ぎたいか」によって、正解は180度変わります。「うちの場合はどっち?」と気になった方は、ぜひ一度プロのFPや税理士にご相談ください。

次回予告(vol.6)

「争族」を防ぐ最強の武器!
「遺言書の種類と、無効にさせない書き方」
をお届けします。どうぞお楽しみに!