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【相続について考える、いま私たちにできること】 vol.3誰が、どれだけもらえるの?「法定相続人」と「遺留分」のルール

【相続について考える】vol.3
誰が、どれだけもらえるの?
「法定相続人」と「遺留分」のルール
(法律:法的に守られる権利と、もめないための基本知識)

「遺産はすべて長男に」という遺言があれば、すべて解決すると思っていませんか?

実は、日本の法律には「法定相続人」という優先順位と、最低限の取り分を保障する「遺留分」という強力なルールが存在します。
まずは、法律が定める「相続の基本形」をマスターしましょう。

1. 相続人の「優先順位」を確認しよう

誰が相続人になるかは法律で決まっており、これを法定相続人と呼びます。

常 に 配偶者(常に相続人になります)
第1順位 子 (亡くなっている場合は孫)
第2順位 直系尊属 (父母、存命でない場合は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹 (亡くなっている場合は甥・姪)

⚠️ 注意点!

後位の人は、前位の人が一人でもいる場合は相続人になれません。
例えば、子がいれば、亡くなった方の親や兄弟には1円も相続権が発生しないのです。

2. 「法定相続分」:目安となる取り分の割合

法律が定めた「目安」の割合です。遺産分割協議(話し合い)がまとまらない場合の基準になります。

相続人の組み合わせ 配偶者の取り分 その他の相続人の取り分
配偶者 と 1/2 1/2 (子の人数で等分)
配偶者 と 2/3 1/3 (親の人数で等分)
配偶者 と 兄弟姉妹 3/4 1/4 (兄弟の人数で等分)
※出典:民法 第900条(法定相続分)の規定に基づく割合

3. 「遺留分」:遺言でも奪えない「最低限の権利」

ここが最も重要なポイントです。「愛人に全額寄付する」「不仲な長女には1円もやらない」といった極端な遺言があっても、残された家族の生活を守るため、最低限の取り分を請求できる権利が認められています。
これが遺留分(いりゅうぶん)です。

  • 遺留分がある人: 配偶者、子、父母
  • 遺留分がない人: 兄弟姉妹 (ここが実務上の大きなポイントです!)

もし遺留分を無視した遺言を書いたら?

権利を侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」を行うと、受け取った人(受遺者)は現金でその分を支払わなければなりません。
これが「争族」の火種になるため、遺言を書く際は「遺留分に配慮した設計」が不可欠です。

遺留分の具体的な割合と計算ルール

遺留分として請求できる総額(遺留分全体)は、原則として財産の1/2です。ただし、相続人が「直系尊属(父母・祖父母)のみ」の場合だけ、財産の1/3となります。

パターン別:個別の遺留分一覧表

各相続人が最終的に「最低限これだけは主張できる」割合をまとめました。

相続人の構成 遺留分の合計 各相続人の具体的な遺留分
配偶者のみ 1/2 配偶者: 1/2
子のみ(2人の場合) 1/2 子(各): 1/4 (1/2×1/2)
配偶者と子(2人の場合) 1/2 配偶者: 1/4
子(各): 1/8
配偶者と親 1/2 配偶者: 1/3 (1/2×2/3 ※注)
親: 1/6 (1/2×1/3)
親のみ(2人の場合) 1/3 親(各): 1/6
配偶者と兄弟姉妹 1/2 配偶者: 1/2
兄弟姉妹:なし(ゼロ)
※注:計算式は「遺留分全体の割合×法定相続分」で導き出されます。
※出典:民法 第1042条(遺留分の帰属及びその割合)

「遺留分」に関する3つの重要トピック

① 兄弟姉妹には「ゼロ」

表の通り、亡くなった方の兄弟姉妹(およびその子である甥・姪)には遺留分がありません。つまり、「子供がいない夫婦で、全財産を妻に遺したい」場合、遺言書を書いておけば、義理の兄弟から遺留分を請求される心配はなくなります。

② 遺留分は「現金」で解決するルール

2019年の法改正により、遺留分を侵害された人は「不動産の一部を返せ」ではなく、「侵害された分を現金で支払え(遺留分侵害額請求)」と求めるルールに統一されました。
リスク:財産が不動産や自社株ばかりで現金がない場合、支払いのために資産を売却せざるを得ない事態に陥ります。

※出典:2019年施行 改正民法 第1046条(遺留分侵害額の請求)
③ 遺留分の算定に含まれる「生前贈与」

遺留分を計算する際の「財産」には、亡くなった時の資産だけでなく、以下の贈与も加算されます。

  • 亡くなる 1年前 までに行われたすべての贈与
  • 相続人に対して、亡くなる 10年前 までに行われた「特別受益(結婚資金や住宅扶助など)」
  • 遺留分を侵害すると知って行われた贈与(期限なし)

4. もめないための基本知識:3つのキーワード

特別受益(とくべつじゅえき)

特定の子だけが生前に住宅購入資金をもらっていた場合など、それを「前渡し」とみなして計算を調整すること。

寄与分(きよぶん)

亡くなった方の介護を献身的に行ったり、事業を無償で手伝ったりした場合に認められる「上乗せ分」。

遺留分の放棄(いりゅうぶんのほうき)

相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を得れば遺留分をあらかじめ放棄させることが可能です(主に事業承継の現場で使われます)。

まとめ:ルールを知った上で「話し合い」を

法律のルールはあくまで「物差し」です。家族全員が納得していれば、法定相続分と異なる分け方をしても全く問題ありません。

大切なのは、「法律ではこうなっているけれど、我が家ではこういう理由でこう分けたい」という意思を、客観的なルールを理解した上で伝えることです。

📢 次回予告(vol.4)

「ルールはわかった。で、結局税金はいくらかかるの?」
という疑問にお答えします。

相続税の計算ドリル!
基礎控除と税率の仕組みをマスターする

をお届けします。お楽しみに!