
2026年度(令和8年度)の税制改正では、私たちの健康維持や万が一への備えを後押しする「生命保険料控除」と「セルフメディケーション税制」に大きな注目が集まっています。家計の負担を軽減し、将来の安心を支えるこれら2つの改正ポイントを詳しく解説します。
1. 生命保険料控除の拡充・恒久化
子育て世帯や現役世代の負担を軽減するため、長年据え置かれていた生命保険料控除の枠組みが大きく動き出します。
子育て世帯を対象とした「加算措置」
今回の改正の目玉は、23歳未満の扶養親族がいる世帯などを対象に、生命保険料控除の限度額を上乗せする点です。
- 現行: 一般生命保険料控除の所得税限度額は一律「4万円」。
- 改正案: 対象世帯については、この限度額を「6万円」程度へ引き上げる方向で調整されています。
これにより、教育費などで支出がかさむ時期の税負担を軽減し、親の万が一の保障を確保しやすくする狙いがあります。
制度の恒久化と「遺族保障」の重視
これまで一時的な措置として議論されることもあった控除制度ですが、今回の改正では「恒久化」が強く打ち出されています。また、単なる貯蓄型保険よりも、残された家族を守るための「死亡保障(遺族保障)」に手厚いインセンティブを与える設計となっており、FPの視点からは「保障本来の役割」を見直す良い機会になると捉えています。
2. セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の拡充
「自分の健康は自分で守る」取り組みを支援するセルフメディケーション税制も、より使いやすく、より強力な制度へと進化します。
対象となる医薬品の範囲拡大
セルフメディケーション税制とは、スイッチOTC医薬品(医師の処方箋が必要な薬から市販薬に転換されたもの)を年間1.2万円以上購入した際に、購入上限額10万円所得控除を受けられる制度です。
- 改正の方向性: 対象となる成分をさらに追加し、日常的な体調不良(風邪、アレルギー、痛み止めなど)で利用する多くの市販薬が対象となるよう範囲が広がります。また現在の控除上限額は8.8万円ですが、これを18.8万円に引き上げることも検討されています。
手続きの簡素化と利便性向上
これまで「検診や予防接種を受けていること」が適用条件として厳格に運用されてきましたが、この証明手続きをマイナポータル等と連携させることで、確定申告時の手間を大幅に削減する方針です。
FPの視点:通常の医療費控除との使い分け
病院にかかった際の費用が10万円(所得の5%)に満たない場合でも、市販薬の購入が1.2万円を超えていれば、この特例で節税が可能です。今回の拡充により、病院へ行く時間が取れない現役世代にとって、より「実用的な節税策」となります。

改正をライフプランにどう取り入れるか
今回の改正は、「子育て世帯の保障確保」と「セルフケアによる医療費抑制」という明確なメッセージが込められています。
- 保険の見直し: 控除枠が広がるからといって不要な保険に入る必要はありませんが、現在「枠」を使い切っている方は、より手厚い保障を検討する際の税効率が良くなります。
- 領収書の管理: セルフメディケーション税制は「薬局のレシート」が証拠となります。2026年に向けて、家族全員分の市販薬購入履歴をより意識的に管理する習慣をつけましょう。
新しい制度を賢く利用することで、家計のレジリエンス(回復力)を高めることができます。ご自身の状況に合わせた具体的な節税シミュレーションについては、ぜひ私たちFPへご相談ください。